2007年04月16日

サブプライムの衝撃(上)住宅減速でリスク露呈――商品理解が不可欠。

2007/04/16, 日経金融新聞,

 米国で信用力の低い個人向けの住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き増加に注目が集まっている。大手のローン会社が相次いで破綻し、株価や経済全体に与える影響も懸念され始めた。問題の背景と広がりを検証した。
 「自分のような人をこれ以上増やさないで」。ニューヨーク市クイーンズ地区に住むフランク・ルジェロさん(69)は嘆く。三十年以上住宅ローンの支払いを続けたが、完済するどころか三万六千ドルだった元本が四十一万ドルに増加。今は退職して年金生活だが、その中からの返済を余儀なくされている。
 元本が増えたのは、月々の返済額が金利を下回る契約だったため。返しきれない金利は元本に加算される。数年後には元本の返済が始まり、支払い額が急増して払えなくなる。そのたびに別のローンに借り換え、借金が膨らみ続けた。
 本来はその人の支払い能力を超えているのに、当初二、三年は返済額を著しく低くしたり、金利だけの支払いにすることで返済可能なように見せかける――。「ネガティブ・アモティゼーション(元本増加型)」「インタレスト・オンリー(金利だけ)」と呼ばれるこれらの商品で、焦げ付きが急増している。
 こうした無理なローンが急速に普及したのは米国が住宅ブームに沸いた二〇〇四年ごろ。融資競争が激化し、金融機関はこれまで貸せなかった層への融資に取り組んだ。住宅ローン実行額に占めるサブプライムの比率は〇三年には約八%だったが、〇六年には二〇%まで拡大した。
 住宅問題に詳しい弁護士のライアン・ウォルシュ氏は「ブローカーが問題を助長した」と話す。複数の商品を比較し、消費者に最適な商品を販売するはずのローンブローカーが特定の銀行と結託し、リスクの高い商品を売れば売るほど高い報奨金をもらうケースが横行していたという。
 これまでは住宅の値上がりがリスクを覆い隠してきた。中古住宅の中央価格は〇四年に八%、〇五年に一二%上昇。返済額が増えるころには家が値上がりし、有利な条件で別のローンに借り換えられたからだ。
 だが〇六年半ば以降、住宅価格の上昇率は鈍化。全米不動産協会(NAR)は、〇七年は調査を開始した一九六八年以降初めて、中古住宅の価格が前年比で下落すると見込む。借り手は返済に行き詰まるようになった。
 ローン会社は債権の大部分を証券化し、投資家に転売してきた。世界的なカネ余りを受け、投資家はこれらの不動産担保証券(MBS)を積極的に購入した。ただ「資産担保証券の市場規模は大きく、サブプライム債権は投資家が分散投資しているうちの一部。現時点では巨額の損失の情報は聞こえてこない」(プルデンシャル・ファイナンシャルのストラテジスト、ロバート・ティップ氏)という。
 「契約の時は必ず弁護士の助言を受けて」。ニューヨーク・ブルックリンの低所得者支援団体ACORNの事務所。これから住宅を買う予定の人に弁護士や銀行マンがローンの仕組みを教えるセミナーが毎週開かれている。参加者は「インタレスト・オンリーなんて初めて知った」と口をそろえる。
 同セミナーでは参加者に対して通常の固定金利のローンを勧め、住宅ローン専業会社でなく大手銀行との契約を推奨する。カウンセリング部門責任者のタラ・ベニーニョ氏は「何より、契約の前にローンの内容を十分に理解することが必要」と強調。収入や信用力の問題ではなく、自己防衛の意識の有無が問題と指摘している。
 「結局、損をするのは弱い消費者だ」(ルジェロ氏の弁護士、オダ・フリードハイム氏)。ルジェロ氏のローンは三年後の支払い額が月収と同じ三千五百ドルに増える。同氏は今、家を売って清算するか、新たなローンに借り換えるかの瀬戸際に立たされている。
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